Researches
WHAT I STUDY
•社会性昆虫の巣仲間の多様性進化について
私は、蜂で一妻多夫や多妻多夫のような社会システムがなぜ進化してきたのか?巣内個体の多様性という視点から進化のメカニズムを解き明かしたいと考えています。
蜂や蟻の祖先種は一夫一妻で巣を形成する社会(家族)システムだったと考えられており、一妻多夫、多妻多夫の社会システムは派生的に進化してきたと考えられています。
(1)女王が複数のオスと交尾する利益は何なのか?
巣内の遺伝的多様性を増やすことで病原菌が侵入してきた時に巣の全滅が防げる(侵入した病原菌で死なない/死ににくい個体がいる)ことを示しました。
https://doi.org/10.1093/beheco/araa062
(2)巣仲間の遺伝的多様性を高める行動:社会寄生
クロスズメバチの仲間は本州中部では4〜5月頃に女王が1個体で巣を作り始めます。この巣を作り始めた頃に女王蜂が他の女王蜂が作った巣を乗っ取ることがあります(社会寄生)。乗っ取りに成功した女王は、元々の女王が産んだ働き蜂の幼虫を育てて、自分の手下として働かせます。これも巣内の個体に遺伝的多様性を増やす効果があるなと思っています。
Ecologist & Science Teacher.
シダクロスズメバチの巣の外被を剥がして、全ての個体の背中にマーキングをして行動観察しています。
シダクロスズメバチ
ヒメスズメバチ
•スズメバチとクロスズメバチの基礎生態の記述
(1)都市に棲むスズメバチやクロスズメバチは何を食べているのか(岐阜大学 土田浩治教授・岡本朋子助教との共同研究)?
本州中部には6種類のスズメバチが同所的に生息していますが、餌や巣場所の奪い合いは生じないのでしょうか?スズメバチといえば色々な昆虫を襲って、大量の餌を食べることが想像できますが、都市部では十分餌生物は足りているのでしょうか?非都市部では食べないようなものを食べているようになっていたりするのでしょうか?
(2)染色体の組換えはなぜ起こるのか(UC, RIverside, Jessica Pursell 助教, Georgia Southern Uni., Kevin Loope 助教との共同研究)?
染色体の組換えはなぜ起こるんだろうか?という疑問は高校生の時からの謎です。どうやら蜂の種類によっては巣仲間の遺伝的多様性を高めることで、生存上有利になることがあります。しかし、多くの蜂や蟻は一夫一妻で、家族の血縁関係が濃い、つまり遺伝的には均質な社会構造をしています。一夫一妻であっても、配偶子を作る際に組換えが頻繁に起こることによって遺伝的多様性が生じることから、一夫一妻の社会構造をしている種ほど組換え率が高くなるという仮説を蜂を対象に検証しています。
(3)巣をカビさせない行動・物質
(4)中国の蜂飼育文化と環境について
(中国科学院 資源昆虫学研究所 Ying Feng 教授, Dr. Min Zhao, Dr. Chengye Wang, CAS Key Laboratory of Tropical Forest EcologyのKen Tan 教授, Dr. Joost Van Itterbeeck, 立教大学 野中健一教授との共同研究)
•生態系保全に関する研究
<川の生態系保全>
(1)高校生にもできる身近な川の小さな自然再生
(土木研究所自然共生研究センター 森照貴主任研究員との共同研究)
高校生や岐阜県、多治見市、土木研究所自然共生研究センターの皆さんとともに川の自然再生に関する研究を行なっています。
目標は① 誰でも気軽に川の魚・昆虫に触れられる場所を作る!
②子供たちが魚や虫を自由に持ち帰れるようにする(生物を増やす)!
ことです。
これまでに実験河川において、川底にパッチ状に穴を掘ることによって水の流れを多様化させることができ、住み着く魚種が増えることが分かりました。一方で、川底の穴は時間が経つとともに埋もれてしまい、自然再生の効果が持続しないことも分かりました。そこで現在は、川底に石を積んで川の流れを多様にしたり、砂を堆積させるなどしています。流れが一様な川から、石を積んで流れにムラができると、流れの早いところ/遅いところを好む種にとって生息しやすい環境ができると考えています。また、積んだ石そのものに魚が隠れたりして生息地もできると考えています。
大雨などによって流量が増加した際には、積んだ石は流されてしまいますが、流されても簡単に再び石積みができます。これは環境保全活動を適宜振り返りながら行う順応的管理に沿った自然再生であると考えています。2020年度からは、多治見市内の河川で石積みによってカワヨシノボリやカマツカなど底生魚の産卵場所・生息場所が作れないか実験し、検証しています。
(2)高校生と多治見市で広める川遊び
2021年度からは、川に棲む生き物を地域の子供に知ってもらう取り組みを高校生と多治見市土岐川観察と協力して行っています。
•東レ理科教育賞・文部科学大臣賞を受賞しました。
https://www.toray-sf.or.jp/information/210216.html
•「地域学校協働活動」推進に係る文部科学大臣表彰を受賞しました。https://www.mext.go.jp/content/20210122-mxt_chisui01-000012285_3.pdf
•指導した研究が内閣総理大臣賞を受賞しました。
http://www.eco-1-gp.jp/winner08.html#w2019_02
•河川基金の支援を受けています。
2019.4-11の活動報告 https://www.kasen.or.jp/kikin/notifi/itemid796-001307.html
石積みの自然再生を行った多治見市の笠原川
高校生と共に、多治見市の環境教育イベントのお手伝いをしていました。
<環境教育の実践研究>
(1)ヒトの生活を含めた”生態系”の理解
世界の約半数以上のヒトが都市部で生活するようになりました。様々な環境問題を生じながら世界各地で都市化が進んでいますが、一方で地球規模での環境保全活動の機運も高まっいます。私たちはどのような環境を作っていけば良いのでしょうか?
そして、何をもって良い環境と言えるのでしょうか?例えば日本の原風景と呼ばれる里山には雑木林や水田がありますが、それらは人間が自然を改変して作った空間です。人間が環境を改変すること=悪、では必ずしもなさそうです。まずは自分たちの考える理想の自然環境、自分の思う原風景を考える環境教育を行い、環境保全の糸口を探ります。
(2)食から考える生態系保全
当然ながら我々ヒトは他の生き物を食べて生きており、食べ物の種類は地域によって大きく異なります。異なる食文化を知ること、楽しむことは現代の喜びの一つでもあります。ただし近年では、動物福祉や環境負荷の点から食肉生産、消費文化のあり方に疑問をもつ人々も増えています。普段の食生活を振り返って、食物を通してどのように環境に影響を与えているのかについて学んでいます。
日本の食料自給率は40%を下回っており、他国の自然を利用して我々の食物を作ってもらっている状況です。私たちが身の回り、世界規模の環境保全を考える際には食物をどうするのか?という視点は欠かせません。東海地方の山間部では現在でも昆虫食文化が残っています。また、それらの地域の方々は山間地域の自然(人間が手を入れている場所も含む)の恵みを受けながら豊かな生活を送っています。地域生態系の中から持続的にヒトが食物を得ている実例をヒントに今後の食生活と生態系保全について考えています。
朝日Globe+に取り上げられました
https://globe.asahi.com/article/12626686
Northwest Uni.(南アフリカ)の環境教育の研究者たちと、各々の原風景について地図を書いて交流しました。
Northwest Uni.(南アフリカ)の環境教育の研究者たちと、食文化について交流をしました。
•ゴキブリの行動に関する研究(理化学研究所革新知能統合研究所 阿部真人研究員との共同研究)
高校生とともにゴキブリの行動に関する研究を行なっています。
https://www.esj.ne.jp/meeting/abst/66/PH-46.html (高校生ポスター賞受賞)